Cubaseに入っているエフェクター(エフェクトと同義)で、コンプレッサーの機能を知っていますか?
エフェクターは、音に対して様々な効果や変化を与えるものです。
コンプレッサーは音量を扱うエフェクターで、ダイナミクス系(音量系)に分類されます。
これを使うと、突発的な大きくなっている音を、自動で小さくすることができます。
これにより、音量がまばらになりがちなボーカル音源など、効率的に均一な音量にすることができます。
その結果、音がとても聴きやすくなるのです。
今回は、Cubaseで利用できるエフェクターのコンプレッサーについて詳しく説明します。
↓記事の内容を、動画でも説明しています。画面中央の再生ボタンを押して、ご覧ください。
コンプレッサーとは
コンプレッサー(Compressor)という言葉は、コンプレス(Compress)という言葉から来ています。
コンプレスとは英語で、「圧縮」を意味します。
つまり、コンプレッサーは「圧縮するもの」で、音量を圧縮します。
コンプレッサーは、ある音量以上になったら、一定の割合で音量を小さくします(下図)。
コンプレッサーは、音量を均一にするために使う
ボーカル音源など、曲が一番盛り上がるサビなどで力んで声が大きくなりやすいです。
このため、全体的に音量がまばらになりやすいです。
コンプレッサーは、特に大きな音量になっている部分を、自動で小さくしてくれます。
これにより、全体的に音量を均一に近づけることができます。
コンプレッサーに似た処理を行うリミッターの場合は、ある音量を超えた分は一律同じ音量になります。
これに対しコンプレッサーは、元の音量の変化具合を残しつつ、均一に近づけることができるのがメリットです(下図)。
コンプレッサーは、ボーカルなど音量差で歌の表現をするような場合に、特に効果的なエフェクターなのです。
僕はDTMをやりはじめてしばらく、この機能を知らずにボーカル音源を曲にミックスしていました。
そのときは、部分的に大きくなっている音を、個別に手作業で小さくしていたのです。
これには、途方もない時間がかかりました。
これは、エンドレスにモグラ叩きをやるような感じでした。
コンプレッサーを使えば、そのような苦労から解放されます。
コンプレッサーは、インサート方式で使用する
エフェクターには、インサート方式とセンド方式の2種類の使い方があります。
インサート方式とセンド方式の違いは、元の音が全てエフェクターで処理されるかどうかです。
インサート方式では、元の音が全てエフェクターを通過します。
これによって、元の音が全てエフェクターに処理されます。
一方、センド方式では、元の音を分岐させて、エフェクターにかけます。
そのため、エフェクターで処理されない元の音を残しつつ、エフェクターの効果を得ることができます。
コンプレッサーは、音量を圧縮するために使います。
この目的では、元の音が残ってしまうときちんと音量が圧縮されなくなります。
そのため、コンプレッサーはインサート方式で使用します。
コンプレッサーの使い方
コンプレッサーは、基本的にトラックに対して使います。
トラックとは、DTMで1つの楽器やパートの音を編集する単位です。
例えば、ボーカルやギター、ドラムに対して使う感じです。
ただ、ドラムパートは複数の楽器がひとまとまりになっています。
そのため、さらに細かくバスドラムやスネアドラムなどに個別にコンプレッサーをかける場合もあります。
Cubaseにおけるコンプレッサーの使い方
それでは、具体的なCubaseにおける使い方について説明します。
コンプレッサーをトラックにかける方法
以下の手順で、トラックにコンプレッサー使用します。
まず、コンプレッサーをかけたいトラックを選択します。
画面左側に、Inserts(インサート)と書かれている部分があります。
インサート方式でエフェクターを使う場合、ここを使用します。
下記の赤丸内をクリックします。
エフェクターを選ぶ画面が出てきます。
「Dynamics(ダイナミクス)」→「Compressor(コンプレッサー)」を選択します。
そうすると、以下のようなコンプレッサーの画面が出てきます。
これで、選択したトラックにコンプレッサーがかかっている状態です。
後は、音源に応じて各ツマミを調整していきます。
ツマミを調整する基本的な順番としては、
1.スレッショルドで圧縮をかけ始める音量を決める
2.レシオで圧縮の強さを決める
3.メイクアップで、圧縮後の全体の音量を決める
4.アタックやリリースなど、その他のツマミを微調整する
という感じです。
もちろん、この順番で必ず行う必要はありませんが、僕は普段こんな感じで使っています。
スレッショルドで圧縮をかけ始める音量を決める
スレッショルド(Threshold)は、しきい値のことで、どの音量から圧縮をかけはじめるかを決めるツマミです。
上記の写真で、値を小さくすると右側の赤丸の点が左下に、値を大きくすると右上に移動します。
下図で言えば、スレッショルドを上げたり下げたりすると、赤い線が上がったり下がったりするイメージです。
この値が小さいほど、小さな音量のものでも圧縮をかけるようになります。
スレッショルドを小さくするほど、「コンプレッサーを深くかける」「深くつぶす」のように言われます。
音量が全体的に小さくなるため、音が目立たなくなっていきます。
あまり前面に出したくない楽器は、この値を小さくするといいです。
逆に、ボーカルの様に曲の前面に出していきたいパートは、あまり深く圧縮しない方がいいです。
上図の様に、通常の声の大きさのところでは圧縮せず、突発的に大きくなるところだけ圧縮するようにスレッショルドを決める必要があります。
それでは、どのようにスレッショルドを決めるかと言うと、音源を再生して下記のように左側の「IN」メーターを見ながら調節します。
INメーターは、インプットのことでコンプレッサーが圧縮する前の音量です。
下記の様に、スレッショルドのポイントよりINメーターが上になれば圧縮し、下になれば圧縮しません。
INメーターがスレッショルドを超えると、下記の様に赤枠内の「GR」が下に延びてきます。
GRとは、「ゲイン・リダクション」のことで、コンプレッサーがどの位音を圧縮しているかを表すメーターです。
このように、実際に音源を再生しながら、スレッショルドの値を決めていきます。
レシオで圧縮の強さを決める
レシオ(Ratio)は、どの位強く圧縮するかを調整するツマミです。
上記の写真で、値を小さくすると右側の赤丸の点が下に、値を大きくすると上に移動します。
レシオは、「比率」を意味します。
元の音量に対して、スレッショルドを超えた音量を、どのくらいの比率で圧縮するかを決めることができます(下図)。
圧縮前の音量:圧縮後の音量がRatio:1になる
例えば、レシオが2なら、スレッショルドを越えた分の圧縮後の音量が1/2、3なら1/3となります。
1にすると、1/1なので圧縮しません。
この値が大きいほど、「コンプレッサーを強くかける」と言います。
レシオを高くするほど、より音量が均一になっていきます。
しかし、あまり高くしすぎると、特にボーカル音源は起伏が無く、聴き応えの無いものになってしまいます。
レシオは、ボーカルなら人によって、または楽器の種類によって適切な値が変わります。
そのため、実際に音を再生しながら、丁度良い値を調節して見極める必要があります。
自分が聴いていて、残っていてほしい強弱がありつつ、急に音量が大きくならないようになっていればOKです。
また、レシオのツマミの下に「soft knee(ソフト・ニー)」というボタンがあります。
これをオンにしておくと、スレッショルドを超えていきなり圧縮を始めるのではなく、より滑らかに圧縮をするようになります。
これによって、より聴き馴染みのいい音になります。
メイクアップで、圧縮後の全体の音量を決める
上記左側の赤枠のメイクアップ(Make-Up)は、圧縮後の全体の音量を調節するツマミです。
上記右端の「OUT」はアウトプットのメーターで、コンプレッサーで圧縮した後の音量を表します。
メイクアップを上げていくと、このメーターが大きくなっていきます。
メイクアップの役割は、圧縮して小さくなった分、全体の音量を底上げしてバランスを取るイメージです(下図)。
メイクアップを上げるほど、全体の音量が大きくなるため曲の前面に音が出てきます。
これも、実際に音を聴きながら調整するといいです。
メイクアップのツマミの下、「auto(オート)」ボタンがあります。
これをクリックすると、Cubase側で適切な音量に自動で設定してくれます。
ただ、僕の場合、autoでやると音量が物足りなく感じることがあるので、自分で調整することが多いです。
アタックやリリースなど、その他のツマミを微調整する
スレッショルド、レシオ、メイクアップの他に、必要に応じて他のツマミを調整していきます。
・アタック(Attack)
アタックは、コンプレッサーがスレッショルドを越えた音量に対し、レシオで設定した圧縮率まで圧縮するまでかかる時間を調節するツマミです。
単位は、ミリ秒(1/1000秒)です。
これは、コンプレッサーの中に「圧縮マン」なる人がいて、フェーダーと呼ばれるボリュームツマミを動かしているのをイメージすると分かりやすいです。
圧縮マンは、耳で圧縮前の音量を聴きつつ、スレッショルドを越えた音が聴こえると「うるさい!」と感じ、フェーダーで音量を下げます。
この時の、フェーダーを動かして、設定したレシオの圧縮率の音量にするまでにかかる時間がアタックです。
つまり、アタックが短ければ短いほど、フェーダーを素早く動かしているイメージです。
アタックを長くすると、音が鳴り始める「立ち上がり」の圧縮が緩やかになります(下図)。
緑色の部分だけ、すぐにレシオの圧縮率で圧縮した場合より音量が大きくなる
これによって、立ち上がりの音が、すぐにレシオの圧縮率で圧縮した場合より音量が大きくなり聞こえやすくなります。
ドラムなどのリズムパートの音は、立ち上がりを強調した方がリズムがしっかり取れるため、アタックをある程度とる方が向いています。
ただし、あまりアタックを長くしすぎると、コンプレッサーがかかってくれなくなるので、注意が必要です。
逆に、アタックを短くすると、スレッショルドを超えた音量がすぐにレシオの比率に圧縮されます。
これにより、音量がしっかりと抑えられるので、音が後方に下がるような印象になります。
アタックは、ボーカルの声や楽器によって適切な値が変わるため、加工後の音を聴きながら調節します。
・ホールド(Hold)
ホールドは、音量がスレッショルドを越えてから、圧縮をし続ける時間を決めることができます。
単位はアタック同様、ミリ秒(1/1000秒)です。
コンプレッサーは、スレッショルドを越えているときだけ作動します。
しかし、ホールドの値を設定しておけば、その時間だけ音量がスレッショルドを下回っても同じ圧縮率で圧縮し続けます。
ホールドを長くするほど、コンプレッサーが起動する時間が長くなるため、音がより平坦になり全体的に奥に引っ込んだ印象になります。
そのため、抑揚を抑えたり、音が後方で鳴っている感じにするときは、ホールドを長くします。
ただ、このツマミは0にしておいて、次に説明する「リリース」を調整する形でも近い効果を得ることができます。
リリースも、圧縮をやめるのにかかる時間を調整するものです。
ホールドの設定は難易度高めなので、コンプレッサーの操作に慣れてきて、より高度な使い方をするときに必要となるツマミといえます。
・リリース(Release)
リリースは、音量がスレッショルドを下回ってから、圧縮をやめるまでにかかる時間です。
ホールドと似ていますが、リリースの場合は圧縮していない状態に戻るまで、徐々に圧縮率が下がっていきます。
音量がスレッショルドを下回った後、急に圧縮をやめてしまうと急激に音量が変化して不自然に聴こえてしまいます。
これを解決するために、リリースの値を取ることで、より自然に聴こえる音にすることができます。
また、リリースは音の余韻成分をコントロールするという意味でも使うことができます。
例えば、リリースを長く取ると、スレッショルドを下回った後の余韻の音をしっかりと潰します。
こうすることによって、ドラムであればメリハリのあるタイトな音になります。
逆に、リリースを短くすると、余韻の音を残す音になります。
ただ、リリースの設定はけっこう難しいです。
不用意にいじると、圧縮したりしなかったりという状態になります。
こうなると、音がぐわんぐわんして気持ち悪い聴こえ方になります(僕はなりました)。
そのため、最初はツマミのすぐ下のautoボタンを使うのがいいです。
これにより、Cubase側で適切な値に設定してくれます。
・Analysis(アナリシス)
アナリシスは、コンプレッサーが入力された音量をどの様に読み取って作動するかを決めるツマミです。
0に振り切るとpeak(ピーク)に、100に振り切るとrms(アールエムエス)に基づいて処理します。
peakは、音量の値をそのまま読み込む方法です。
しかし、実際の数値上の音量と、人間が感じる音量は少し異なります。
rmsの場合、より人間が感じる音量に近い方法で処理を行います。
実際の音量の数値から、平均値を取るような感じです。
一般的には、ボーカルなど、音の強弱が連続的に変化するものはrmsがいいとされています。
そのため僕は、ボーカルのコンプレッサーの設定はrmsに振り切っています。
逆に、不連続に音量が変わる、打楽器系はpeakの方が適していますので、そちらに振り切ります。
プリセットについて
赤枠部をクリックすると、下記のプリセット選択画面が表示されます。
プリセットの選択画面
コンプレッサーには、プリセットといって、各ツマミの値が最初から決まっているものを選ぶ機能もあります。
ただ、最初はどのような値にすべきか見当をつけにくいと思います。
プリセットは、楽器や曲のジャンルなどに応じた値が最初から設定されています。
そのため、まずこちらを選んでみて、感じをつかんでみるのもいいでしょう。
・live(ライブ)
コンプレッサーの右下の方にある、ライブボタン。
これを押すと、コンプレッサーの先読み機能をオフにすることができます。
Cubaseのコンプレッサーは通常、より正確な圧縮処理をするために、実際に再生されている音の先のデータも読み込んでいます。
しかし、この先読み機能があるために、一定の処理時間がかかります。
これによって、コンプレッサーで処理された後の音が遅延します。
これは、レイテンシー(latency、「遅延」の意味)と呼ばれます。
コンプレッサーを使った分、実際に再生されるはずのタイミングより少し遅れるよ、ということです。
ライブボタンをオンにすると、先読み機能がオフになる分、それだけレイテンシーが少なくなります。
これによって、ライブなど、よりリアルタイムな処理が求められる環境に適した動作になります。
ただし、先読み機能がオフになる分、圧縮性能は落ちるみたいです。
…と、いろいろ説明してきましたが、自宅でDTMをやる分にはオフで問題ありません。
オンとオフを切り替えてみましたが、そこまで大きな遅延が発生しているように感じられませんでした。
実際ライブ中にCubaseのコンプレッサーを使うなら、オンにしておくといいのかなと思います。
まとめ
今回は、コンプレッサーの役割と、基本的な使い方を説明しました。
コンプレッサーは、音の変化が分かりにくくて、操作も難しいので徐々に慣れていくと良いと思います。
僕のサイトではこの記事以外にも、Cubaseの操作方法について詳しく解説した記事を数多く掲載しています。
ただ、個別の記事を読んでいてもなかなか全体の流れはつかみづらいと思います。
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