ボーカル曲を作るとき、作詞と作曲どちらを先に行うか、人それぞれ違うと思います。
では、どちらを先に作るべきなのかというと、どちらから先に作っても構いません。
音楽製作にルールは無いですからね!
作詞を先に行うやり方を詞先(しせん)、作曲を先に行うやり方を曲先(きょくせん)と呼びます。
そして、詞先と曲先それぞれに、メリットとデメリットがあります。
それらを意識すると、自分にはどちらの方法が合っているのかがわかります。
また、曲を作るときの状況によって、どちらの方法で作ればよいのかがわかります。
そこで今回は、これら2つの曲作りの方法の特徴について説明します。
さらに、詞先でも曲先でもない、第三の方法についても紹介します。
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詞先のメリット・デメリット
歌詞を先に作って、それに合わせて曲を作る方法を詞先といいます。
この方法の主なメリットは、以下の2つです。
・ルールにとらわれることなく、とても自由な表現が出来る
・作者の生々しいメッセージを表現しやすい
まず、言葉というのは何千、何万という単語によって成り立っています。
とにかく言葉はたくさんあって、「辞書」というものがあるくらいですからね。
その為、使える言葉の選択肢がとても多く、それだけ自由な表現を行うことが出来ます。
また、歌詞を最初に作るため、メロディがどのようになるか気にする必要がありません。
そのため、自分の思いや伝えたいことをそのまま言葉にすることができます。
よって、メッセージ性の強い曲を作ることができます。
一方、デメリットとしては、曲先に比べて曲作りが難しくなりやすいことです。
これは、「自由な表現を行うことができる」という作詞におけるメリットが、そのまま曲に仕上げる上でデメリットになるというものです。
そもそも、音楽にはリズムという重要な要素があります。
これはつまり、一定の音のパターンの繰り返しです。
例えば、一般的な音楽はほとんど4拍子で作られています。
この4拍子は、「イチ、ニ、サン、シ」と、等間隔のタイミングで音が鳴るのが繰り返されるものです。4回音が鳴るのがワンセットのパターンで、これがずっと繰り返されます。
リズムの他にも、メロディの繰り返し、1番と2番の繰り返しなど、曲の中であちこちに「繰り返し」が登場します。
しかし、文章は逆に「繰り返し」を嫌う性質があります。
文章中で同じ言い回しや同じ単語が使われると、表現力に乏しいつまらない文章になってしまうからです。
繰り返しを嫌い、多種多様な表現がされた文章から、繰り返しを好む音楽として仕上げていく。これ、けっこう難しいと思いませんか?
言葉のバリエーションが多い分、音楽の特徴であるリズムや繰り返しに、しにくいのがデメリットと言えます。
そのため、1番の歌詞をまず作り、2番は1番の歌詞とある程度文字数を合わせるなどして、曲を作りやすくするといった方法がとられることがあります。
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曲先のメリット・デメリット
曲を先に作って、それに合う歌詞を作っていく方法を曲先といいます。
この方法の主なメリットは、以下の2つです。
・難しく考えずに、ひらめきと感性で曲を作りやすい
・先に曲の構成が決まるため、歌詞の影響を受けにくく、曲を作りやすい
曲先の場合、多くは短いメロディをひらめくところから始まります。
詞を考える場合、「意味」を考える必要がある分、時間がかかる場合があります。
しかし、メロディそのものには「意味」は無いので、難しく考えなくても作ることができます。
また、一般的な音楽であれば「ドレミファソラシド」の七音階で作られているため、
膨大な数が存在する言葉の中から表現を選ぶ作詞よりも、容易につくることができます。
また聴いて気持ちのいいメロディというものは、音楽を普段から聞いていれば、誰しも感覚的に感じとることができると思います。
そのため一度思い付いたメロディがあれば、自分の中の「心地よいメロディ」を頼りに、自然と続きのメロディを作り上げることができます。
そして、曲を先に作った場合、その時点で作品として形が出来上がります。
なぜなら、歌詞がなくとも曲は成り立つからです。
曲が既に出来上がっているため、メロディに合わせて歌詞を当てはめていけば、作品が完成します。
そのため、曲全体に大きな変更をすることなく、無駄なく曲を仕上げていくことが出来ます。
曲先のデメリットとしては、メロディに縛られて作詞をするため、詞先ほど自由な言葉使いが出来ないということです。
ちなみに、僕はほぼ全ての曲を曲先で作っています。
僕の場合、曲を作るときはほとんど、メロディのひらめきから始まります。
僕は音楽って「音」が主体のものだと考えています。
なぜなら、自然の音や人工的な音から、メロディやリズムを持った「音楽」が生まれたからです。
音楽のはじまりと言われているものは、打楽器を中心とした民族音楽です。
打楽器というのは、楽器を「叩く」というシンプルな方法で音を鳴らします。
同じ楽器を一様に叩くので、音階というものがありません。
そのため、リズムのみによって構成される音楽が生まれました。
そこからより高度な、音程を作り出すことが出来る笛などの楽器が登場します。
これによって、メロディのある音楽が生まれます。
それがさらに発展して、賛美歌など、メロディに合わせて歌詞を乗せる「歌」が登場したのです。
このように、
「音」→「音楽(リズムやメロディを持った音)」→「歌詞のある音楽」
という流れで、音楽というものが出来上がりました。
曲先は、より自然な形で感性をもとに作っていくことができます。
このため、特にこれから音楽製作をする方にはオススメの方法です。
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詞先でも曲先でもない、第三の方法
ここまで、詞先と曲先の2種類の方法をご紹介しました。
実はこの他にもう一つ、僕が考えた面白い曲作りの方法があります。
それは、曲のタイトルを先に考えてその後に詞や曲を作る方法です。
名付けて、「題先(だいせん)」です。
この方法の特徴は、詞先や曲先以上に自由に曲作りが出来る点です。
タイトルを先に考えるだけで、歌詞もメロディも定まっていないため、詞先や曲先よりも縛りが少ないからです。
しかし、もしかしたら「タイトルを先に考えるというだけで、結局、詞先や曲先と変わらないのではないか」と思われるかもしれません。
多くの場合、タイトルは曲が出来上がってからつけられます。
しかし、タイトルを決める作業をあえて最初に持ってくることで、先に曲のイメージを明確に決めてしまうのです。
「名は体を表す」という言葉があるように、タイトルが先に決まっていると、どんな曲にするかのイメージが固まっていきます。
どんな曲にするかの方向性は決まっていつつ、歌詞やメロディといった肉付けの部分はとても自由に作れるのが題先の良さだと思います。
ちなみに、以前僕がグループで音楽活動をしていたときに作った曲で「僕らの天球儀」という曲があります。この曲はまさに「題先」で作った曲です。
「僕らの天球儀」作詞/作曲/編曲:ユータ&いとちん
まるでそんなタイトルのアニメがあるようなイメージで、あたかもその主題歌を作るように曲を作っていきました。
題先にはそのように、曲の世界観を重視して作るときに有効な方法です。
ただ、タイトルを先に考えるということは、一番大切な部分を最初に決めるということになります。
ひらめきがあれば、すんなり思い付くかもしれませんが、そうでなければタイトルを決める段階で熟考が必要となります。
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まとめ
ここまでご紹介してきたように、ボーカル物の曲を作るときは以下のように作る順序によって、それぞれメリットとデメリットがあります。
■詞先
(メリット)メロディにとらわれず自由に詞を作ることができる
(デメリット)曲先より曲作りが難しくなる
■曲先
(メリット)詞先より曲が作りやすい。感性を元にして曲作りができる
(デメリット)詞先より歌詞を自由に作りにくい
■題先
(メリット)曲の世界観を重視しつつ、詞先や曲先よりも自由度の高い創作ができる
(デメリット)タイトルを考えるのに時間がかかる
上記に特徴が分かっていれば、状況や自分の得意なやり方を選びやすくなると思います。
是非、今後の作品製作の参考にしてみてください。
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