パソコンで曲作りをするDTMをしていると、「ピッチベンド」と呼ばれるものを聞くことがあると思います。
ただ、最初はこれがどんなものか、どう使うか、何の役に立つのかよく分からないこともあると思います。
僕も、DTMを始めた頃は、ピッチベンドという言葉は聞いたことがあっても、イマイチよく分かりませんでした。
ですが、現在はピッチベンドの意味や用法が分かるようになり、これを活用することで、打ち込みでも生演奏の様にクオリティを高められるようになりました。
今回は、DTMにおけるピッチベンドの意味や使い方、注意点も含め詳しく解説します。
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もくじ
ピッチベンドとは?
ピッチベンドとは、「ピッチ(pitch=音の高さ)」と「ベンド(bend=曲げる」で、音の高さを曲げる様に連続的に変化させることができる、MIDIのパラメータです。
MIDIとは、DTMで使用される音楽データに関する取り決めや、データの保存方式です。
ピッチベンドの利用目的
ピッチベンドは、うまく調整することによって、打ち込みの音でも生演奏のようなリアリティを出すことができます。
通常ピッチは、作曲ソフトのピアノロールの画面で、ピアノと同様に鍵盤の移動によって変化させます。
このとき、隣り合う鍵盤のピッチの差は「半音」と呼ばれます(下図)。
このため、ピアノロールの画面では、ピッチの変化は最も小さくて半音ずつとなります。
ピアノの様な鍵盤によって音を出す楽器では、ピッチ変化はきっちり半音ずつです。
一方、例えばギターやベース、バイオリンなどの楽器では、半音ずつでなくもっとなめらかにピッチを変化させることができます。
これは、これらの楽器がピアノの様に鍵盤によって音を鳴らすのではなく、弦を手で押さえてピッチをより細かく変化させることができるからです。
例えばギターのスライド奏法やグリッサンド、ビブラートなどが、なめらかなピッチ変化を使うテクニックです。
スライド奏法は、半音2個分位程度の小さめで、なめらかなピッチ変化を作るもの。
グリッサンドは、半音12個分(1オクターブ)など、幅広くピッチを変化させるテクニック。
ビブラートは、周期的にゆらゆらとピッチが上下するテクニックです。歌でもビブラートはありますね。
このような生演奏で使われるテクニックは、半音ずつのピッチ変化ではDTMでうまく再現できません。
そこで、より細かく、連続的にピッチを変化させるため、ピッチベンドのパラメータを使います。
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ピッチベンドの使用例
以下、ピッチベンドを動かして、スライド奏法・ビブラート・グリッサンドをDTMで再現してみました。
エレキギターのスライド奏法
ピッチベンドの使用例として、エレキギターのスライド奏法を再現してみました。
以下の動画をご覧ください。
各フレーズの始まりの音を、半音2低い音からなめらかに元の音に戻すことによって、生演奏独特のスライド奏法の感じを再現してみました。
もし、ピッチベンドを設定していないと、以下の動画のようになります。
ピッチベンドを設定した時に比べて、生演奏独特のピッチ変化がなく、のっぺりとした印象になっていると思います。
ピッチベンドのパラメータは、以下の様に設定しています(下図赤丸部分)。
パラメータの見方は、以下の通りです。
エレキギターのビブラート
続いて、エレキギターのビブラートをピッチベンドを使って再現してました。
下記の動画をご覧ください。
ギターのフレーズの最後、長く音を伸ばすところで、波打つようにピッチを周期的に低くすることで、ビブラートを再現しています(下記)。
もし、ピッチベンドを動かしていないと、以下の様な感じです。
ピッチベンドを動かした場合よりも、ピッチ変化が少なく、こちらがより打ち込みらしい音になっています。
ベースのグリッサンド
もう1つ、ベースのグリッサンドを表現してみました。
下記の動画をご覧ください。
ベースのフレーズの最後に、1オクターブ上がって、今度は1オクターブ下がるという表現をしています(下記)。
ピッチベンドの設定としては、最初に0から最大値まで上げて、その後0に戻してから最小値に下げています。
グリッサンドの幅は1オクターブ取りたかったので、ベンドレンジも上下それぞれ半音12(1オクターブ分)で設定しています。
ベンドレンジについては、次に詳しく解説します。
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重要なパラメータ、「ベンドレンジ」
ピッチベンドを設定するとき、もう1つ「ベンドレンジ」と呼ばれるパラメータも意識する必要があります。
ベンドレンジとは、ピッチベンドを動かして、どの位の幅でピッチを変化させるかの幅を決めるものです。
他にも、「ピッチベンドレンジ」とか、「ピッチベンドセンシティビティ」などと呼ばれます。
ピッチベンドは、MIDIデータとして設定しますが、ベンドレンジは音源側で設定します(下図)。
MIDIデータと音源は、楽譜と演奏者のような関係です。
MIDIデータはピッチベンドはもちろん、音の強弱や高さなどが記録された、いわば「楽譜」のようなものです。
ただ、楽譜だけでは音は鳴りません。実際の演奏では、楽譜を見ながら楽器を演奏する人が必要です。
この演奏者に該当するのが、「音源」です。
作曲ソフトでは、音源を立ち上げることによって初めて音がなります。
そして、ベンドレンジは、音源の中で決めるパラメータです。
ベンドレンジは、手動で変更しない場合、多くは上下で半音2ずつ変化する設定になっています。
先ほどのスライド奏法の再現の例では、ベンドレンジは初期値のまま、上下それぞれ半音2となっています。
これは、ピッチベンドを最大値まで上げると半音2音が高くなり、最小値まで下げると半音2音が低くなるということです。
先ほどの例では、「半音2低い音から元の音に戻す」ということをしたかったので、ベンドレンジを上下それぞれ半音2として、最小値から元の値にピッチベンドを動かしています。
また、先ほどのベースのグリッサンドでは、上下それぞれ1オクターブ分のピッチ変化を作りたかったので、ベンドレンジは上下それぞれ半音12としました。
ちなみに、ベンドレンジは音源によって呼び方や値の設定方法がまちまちなので注意が必要です。
僕がこれまで使ってきた音源では、「BEND」「PB」など、ピッチベンドに由来する呼び方になっていました。
また、プラスとマイナス個別に設定できたり、できなかったり、設定できる値が上下半音6だったり、それ以上だったりとソフトによって仕様が違うことがあるので、ご自身の作曲ソフトや音源毎に確認しておきましょう。
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使用時の注意事項
以下、僕自身が実際に経験して分かった、ピッチベンド設定時の注意点をお話しします。
ピッチベンドを0に戻さないとピッチがずれたままになる
通常、何もしなければピッチベンドは「0」の状態です。
そのため、一度値を0以外にした場合、変更した後はずっとピッチが変わったままになります。
よって、思った通りの音の高さでメロディが鳴らなくなってしまいます。
これを防ぐには、曲の途中でピッチベンドを変更した場合、必ず値を0に戻しておくことが必要です。
ベンドレンジは十分な幅を持たせる必要がある
ベンドレンジは、多くの場合初期値が上下半音2ずつとなっています。
そのため、グリッサンドなどのように大きくピッチを動かす表現をする場合、初期値のままだと目いっぱいピッチベンドを動かしても最大半音4個分しかピッチを動かすことができません。このため、思うような表現にできません。
なので、グリッサンドなどを行う場合は、例えば上下それぞれ半音12のベンドレンジを持たせるなど、十分な幅を持たせる必要があります。
ベンドレンジが合っていないと、想定した通りの音にならない
ピッチベンドを設定していても、ベンドレンジが変わってしまうと、変化するピッチの幅も変わります。
このため、例えば僕がスライド奏法を再現するためにピッチベンドを設定していた場合、他の人の環境で音を鳴らしたとき、ベンドレンジが一致していないと同じピッチ変化になりません。
他にも、グリッサンドしたつもりが、何かちょっと音の高さが変わっただけ、みたいなことになってしまいます。
このようなことにならないよう、もしMIDIデータだけで曲のやりとりをするときは、ベンドレンジがいくつになっているかもお互いが分かっていることが必要となります。
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まとめ
ここまで説明してきたように、ピッチベンドを活用することで、打ち込みでも生演奏のような活き活きとした音を作っていくことができます。
ただ、ベンドレンジなど、ちょっと込み入った設定も意識する必要があるので、注意していきましょう。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。